ミッション:天才が生まれる街を作りましょう

皆さん、お子さんのいらっしゃる方も多いと思いますが、親として、「子供の運命はわからないけれど、いろんな可能性を広げてあげたい」と思われたことはありませんか?

しかも、歴史や社会に影響を残すに至るようなレベルの人物、『天才』になれたら素晴らしいですよね。

では、どうやって天才になる?
生まれつきですか?
それとも、努力をすれば天才になれる?

歴史上の著名人に関して、複数の分野に渡り数百年の研究によって、ある共通点が見えてきました。
それは、ひとことでいうと、「刺激」によって能力が上がるということ。『天才』のレベルまで知能が上がる可能性もあります。
「運動」によって「筋肉」がつくのと同じように「刺激」によって「知能」が育ちます。
(知能のタイプは大きく分かれると、言語的知能・論理数学的知能・空間的知能・音楽的知能・運動的知能・社会的知能・実存的知能があるといわれています。)

エリック・ワイナー氏のまとめ方が好きです。ご興味がありましたら、ぜひ「世界天才紀行 ソクラテスからスティーブ・ジョブズまで」の本を読んでみてください。

それでは、お子様が『天才』になるための「刺激」はどこで手に入りますか。どこで買えるのですか。
「刺激」はもちろん「経験」から得ることができます。また、実際に「トラブル」や「問題」が、結果的にポジティブな刺激を与えることが多いと言われています。
つまり、「かわいい子には旅をさせよ」という教えは、まさに天才を生み出す前提なのかもしれません。

しかし、親としては、子供のために何かをしてあげたいでしょう。勇気のある親は「旅をさせる」ことで精一杯ですが、わざわざ子供に「刺激」を与えるために「トラブル」を作ることまではできないでしょう。

なお、『天才』は定義によると「独自性の高い人」とありますので、確実に『天才』を育てるために親ができることは、残念ながらありません。
しかし、きっかけを作ることはできます。恵まれた「背景」や「器」を与えることで子供は『天才』の道に入っていけるかもしれません。

ワイナー氏の言葉を借りますと、子供は「環境」によって、『天才』に育ちます。
アリストテレス、ソクラテス、プラトンが生きた紀元前400年頃のアテネ市は間違いなく、『天才』を育つのに相応しい「環境」でした。
レオナルド、ミケランジェロ、ドナテロの1500年頃のフィレンツェも、アダムスミス、デビッドヒューム、ジェイムス八トンの1700年頃のエディンバラもまさに『天才』の能力を引き出すための環境がありました。

上記の例のような街の様子を、現代の通りに取り入れることができれば、私たちの子供も『天才』になるのでしょうか?
期待できるでしょう!

高い知能指数(IQ)の人たちだけが入会を許される、世界最大にして最古の高知能協会Mensa
https://www.mensa.org/)の実験で、複雑なまちなみ(スロープ、カーブの多い街)と整備されたまちなみ(グリッド型の街)で育ったそれぞれの子供たちのIQを比較しました。

親の経済状況、教育レベルなどを均等にした統計的な結果では、複雑なまちなみで育った子供たちは(天才レベルの子供を除いて)、IQが10ポイント高かったそうです。

つまり、整備されたまちなみで育った子供は環境から受けた刺激が少なかったので、潜在能力があったのにも関わらずIQの10ポイントが実らなかったというとらえ方もできるのかもしれません。

ここで、「複雑なまちなみへ引っ越しましょう」という結論ではないですが、環境(街、家、部屋の中)は子供に大きな刺激を与えるので気を付けましょうというメッセージをお伝えしたいと思います。

そして、もう一つのコンセプトを思い出してほしいのですが、人生を支えるのは「衣・食・住」ですね。

「食」:心を込めて、美味しい料理を食べると、「刺激」になるのは間違いないし、幸せな気分になれます。毎日食べないと、生きていけないし、せっかくなら毎日美味しいごはんを食べたいですね。

「衣」:衣類に関しても、綺麗な服を着ると自信に繋がりますし、バランスを調整しながら個性を出してくれます。服は少なくとも季節ごとに代える必要がありますが、上手に保管をすれば数年同じ服が使えますので、精神的にいい影響を与えている服は、長い間そのいい影響を与えて続けてくれます。

「住」:住まいも人生に欠かせない要素ですが、「食」や「衣」と比べると明らかに慎重に考えなければなりません。なぜなら、家を建てるあるいは、改装をするには「食」や「衣」よりも、たくさんの時間と費用がかかります。その代わり、毎日あるいは毎年のように建てなくてもよいものです。建てた家と、長いお付き合いになります。もちろん、失敗をすれば、なかなか変えられないので、慎重に計画をしなければなりません。なお、家を建てる時に、基本的には、「失敗」と「成功」の基準はありません。

まずは目標があり、その目標を現実にできれば「成功」だと思います。

例えば、このカラムの話題は、「天才が生まれる家」に関してです。必要性・機能性から生まれるデザインや、五感で経験できる仕上げ材を使った空間であれば、子供は刺激を感じることでしょう。子供は「どうして?」と疑問に思うことで、クリティカルシンキングや想像力の発展と繫がります。

私は、プロセスが形に見えてくる建築、個性的な色合いや質感のある家づくりを是非お勧めします。

家を建てるというのは、私にとっては、仕事だけではなく、ミッションです。
私たちは、既製品があふれている時代に生きています。
人間はみんな無難で、礼儀正しいロボットのようになればよいという考え方もあるかもしれません。
でも、AIが発展している社会の中でロボット人間は不要ですね。
コンピューターができないことができるからこそ、人間は素晴らしいのです。
子供は無限の能力を持って生まれてくると思いますが、環境によって想像力が成長し難いというリスクはあるのかもしれません。
人生設計はなかなか予定通りにはいかないこともありますが、まずは最大の可能性を提供をして、子供に刺激の多い環境を与えたいですね。これは『天才』になるための第一歩になるでしょう!